映画中ペアダンス重要度:★☆
2004年スペイン、イギリス、イタリア、ルクセンブルク、アメリカ
出演:スカーレット・ヨハンソン、ヘレン・ハント
監督:マイク・バーカー
93分
--
原題は「A Good Woman」。
女優の魅力で売りたいと考えた日本の配給会社が付けた邦題は残念ながら50点。
訓話劇というか、江戸人情小咄というか、ストーリーの面白さで引っ張るこの映画のタイトルは、やはり原題の「A Good Woman」が最良です。
オスカー・ワイルドの『ウィンダミア卿夫人の扇』を原作にした作品。舞台は、原作の19世紀末イギリスから、1930年代のイタリアはアマルフィに移し換えられたそうだが、そもそも原作を知らないし、そういった予備知識も無しに見たが、楽しめる作品でした。
ストーリーについてはAmazonその他映画サイトをご覧になるとあらすじが出ておりますのでここでは割愛。
最初は避暑に集う有閑層のドロドロを美しい映像と俳優で見せるだけの作品なのかな、という感じで見ていましたが、意外なストーリー展開(というほどのものではないかもしれませんが、オー・ヘンリー的どんでん返し?)に、「お、そうくるか?」という感じでだんだん引き込まれていきました。
人気のスカーレット・ヨハンソンについてはさほど魅力的とは思いませんでしたが、ヘレン・ハントは素晴らしく魅力的。名うての悪女だが、実は……という役を見事に演じていました。理想の熟女?(笑)
さて、本題のダンスシーン。
物語のクライマックス的シーンの豪華な誕生日パーティで見ることができます。
バンドが演奏するのはテンポの速いスウィングジャズ。混み合ったパーティ会場で銘々が楽しそうに踊ります。
曲はチャールストンのようにも聞こえ、遠景のカップルはチャールストン的な動き(手を回したり、足を前後にポイントするだけのステップ)もやっているようでした。
速い曲なのでテンポの取り方がそれぞれ違っているのが面白いところ。チャールストンもあれば、その場でリズムに合わせて揺れる程度のダンスもあり。
中でもやたらとピッタリとくっついて、やたらと速いテンポで踊る一組のカップルが二度ほど映ります。
むむ、これは、バルボアでは? 私もブログを長く休んでいる間に多少の知識の上積みがありました(笑)。
バルボア(balboa)とは小さく素早く跳ね続けるようなステップと、胸と胸をくっつけるような深いダンスホールドが特徴のスウィングダンスの一種です。私も最近YouTubeで見て知りました。難易度はかなり高そうですが、もの凄く楽しそうなペアダンスです。
日本ではあまり馴染みのないダンスでしょう。
バルボアは1930年代のカリフォルニアでリンディホップから独立して生まれたダンスだそうです。
チャールストンは1920年代と1930年代にかけて、生まれ故郷の米国だけでなく世界中で大流行したダンス。以前、ピカソがチャールストンを踊る記録映像を見たことがあります(あれダリだったかな?)。
今はチャールストンも単体で踊られることは少なく、スウィングの一種として、また競技用のクイックステップの中に一部要素が残っている程度。
この映画はセットや衣装なども非常に凝っており、1930年代の富裕層の風俗を正確に描くことにも注力していて、そんなことから、映画中ほぼ単なる背景でしかない(主要人物は踊らない)パーティのダンスシーンにも、当時の流行の中心であるチャールストンと、最先端ダンスであるバルボア(最先端だから一組だけ)を登場させたのではないかと思います。
そうした細かいこだわりの部分にも好印象を持った『理想の女(ひと)』。上映時間の適切さ(93分。100分以下の映画はそれだけでちょっと評価が上がる・笑)もあって、見ても損はない映画とオススメできます。
[→映画タイトル目次へ]
最近のコメント