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絵画の中のペアダンス

踊る男女の姿を描いた絵画・名画はあまりありません。魅力的なモチーフだと思うんですけど、なんでなんでしょうね? もちろん、私があまり知らないだけかもしれませんが。

350pxrenoir21_2 ペアダンスを作品に描いている作家といえば、なんといってもルノワールです。
印象派の巨匠で日本でも人気の高いルノワール。代表作とも言える『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』は、モンマルトルにある庶民的なダンスホールを描いた作品です。明るい木漏れ日の下、楽しそうに談笑したり、ダンスをする人々。1876年の作品です。

Photoshop001_2 ルノワールは1883年に「ダンス三部作」と呼ばれる作品を残しました。
それが『都会のダンス』『田舎のダンス』『ブージヴァルのダンス』です。縦長のキャンバスに踊る一組の男女が描かれた作品です。
作品に関する詳しい説明はこちらのサイトが良いと思います。「ダンス三部作」のPC用壁紙もダウンロードできますよ。(→名画壁紙美術館

どんなダンスを踊っているのかは、絵を見ただけでは判然としませんが、ヒントはあります。

ダンス史をひもとけば、この頃はまさにワルツ全盛期。フランスではパリオペラ座の仮面舞踏会など舞踏会(バル)が、あらゆる階層で熱狂的に開催されていた時代です。
有名なウィーンの「会議は踊る」が1815年。そこからヨーロッパ全土でワルツが広まります。日本でもあの鹿鳴館が1880年頃から。

社交ダンスの種目の中でもっとも古いのがワルツです。ほかのダンスは、すべてその後のダンス。もちろん、そのダンスの原形となるものはそれぞれの発祥地で歴史を持っていますが、ヨーロッパ(特にイギリス)に持ち込まれて、改変・整備されて社交ダンスの種目になります。タンゴもルンバも、みなワルツより後のダンスです。

ワルツ以前に宮廷などで踊られていたのはメヌエットなどのダンス。これらのダンスとワルツが異なるのは、ハッキリとしたペアダンスであるということです。
儀礼的な部分が多分に含まれるメヌエットや、グループダンスの色合いが強いカドリーユなどと異なり、ワルツは二人一組が一曲を踊りきる二人のためのダンスです。

ルノワールの「ダンス三部作」は、まさにワルツの特徴である“二人のダンス”という世界を描いています。
そんなこんなで、きっとルノワールの作品で描かれているのは「ワルツ」だと私は思います。

それにしても、これら作品で描かれるダンスホールドの深いこと。要するに男女の距離が非常に近い。いわゆるチークダンス(チークとは“頬”のこと。頬寄せ合って踊るのがチークダンス)のような雰囲気。もしくはアルゼンチンタンゴのようなディープさです(特に『ブージヴァルのダンス』の女性の左手が男性の首の後ろにまで回るようなダンスホールドは現在ではアルゼンチンタンゴで特徴的)。

でも、どれもとても素敵です。自然なダンスホールドがこそが美しい、そう思わせてくれます。
一方、現代の競技ダンスのダンスホールドは、果たして多くの人に美しいと思ってもらえるでしょうか? 全身に緊張感をみなぎらせ、不自然に反り返り、男女が明後日の方向を見ている……。少なくともルノワールの描く柔らかい雰囲気とは相容れない気がしますね。


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